「長浜鉄道スクエア」の見学を終えた後、僕は現在の長浜駅の反対側へと足を伸ばした。目的地は「黒壁スクエア」だ。時刻は昼前になっている。
長浜には近江と北陸とを繋ぐ北国街道が通っている。街道沿いには古い町並みが残されていて、その一角が「黒壁スクエア」と呼ばれているのだ。
明治時代のこと。北国街道沿いに「第百三十国立銀行長浜支店」が建造された。黒漆喰塗りの外観から「黒壁銀行」の愛称で親しまれたのだが、「黒壁スクエア」の名称はそれにちなんでいる。
「黒壁スクエア」は長浜の観光地として人気が高く、この日も多くの人出で賑わっていた。雑多な店が軒を連ねながらも、どこか風格を残している。以前訪れたことのある川越を思い出した。
ぶらぶらと歩いていると、無数の風鈴が吊り下げられた通りを見つけた。「風鈴小路」と言い、夏のあいだだけ設けられているらしい。その涼やかな見た目と音に、束の間、暑さを忘れることができた。

当初はここで昼食をとってから長浜を発とうと考えていたの。だが、これという店が見つからず、加えてどの店も予想以上の混雑ぶりだったため、諦めて次の目的地へと向かうことにした。
店を探してうろつくうち、「風鈴小路」で感じた涼やかさはとっくに霧散してしまっていた。
