#6. 新しい敦賀駅の混雑と北陸新幹線弁当|2024年8月

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敦賀駅

2024年3月、北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸された。それ以来、敦賀駅を訪れるのは初めてのこととなる。

駅舎と駅周辺は新しく整備され、より現代的で洗練された印象に生まれ変わった。

だが一方で、駅から少し離れると以前と変わらない街の匂いが、依然として残されているようだ。

大通りを歩き進めると、以前の記憶がゆるやかに蘇ってきた。

敦賀鉄道資料館

かつて敦賀を訪れた際、「敦賀鉄道資料館」を見学した。

建物の規模こそこぢんまりとしていたが、展示内容は濃密で実に興味深く、印象に残った。

それによれば、航空機による移動が一般的なものとなる前、敦賀は日本と欧州を繋ぐ“玄関口”だったという。

人々は、まず東京から金ケ崎駅(後の敦賀港駅)まで出、そこで船に乗り換えてロシア・ウラジオストクへ。さらにシベリア鉄道に乗り継ぎ、ヨーロッパを目指した。

東京からベルリンまでの通しの切符もあり、写真が展示されていた。日本と異国の地名が隣に並んだ切符を見て、名状しがたいようなロマンを覚えた。

できれば再訪したい場所だったが、今回は行程の都合で見送ることにした。

売店

僕は歩いてきた通りを適当なところで引き返し、駅まで戻ってきた。食事ができそうな場所を探していたのだが、飲食店はどこも混雑している様子だったため、見切りをつけたのだ。次の列車の発車時刻を考えると、行列に並ぶことに時間を掛けることは避けたかった。

とはいえ、この日はすでに長浜でも昼食を逃しているから、これ以上昼食を先延ばしにすることはできない。どうも今日は、そういったタイミングの歯車が噛み合あわない日らしかった。

考えた末、駅構内で駅弁を買うことにした。売店をうかがうと、「鯛鮨」、「焼き鯖寿司」といった、北陸らしく海の幸を主役に据えた弁当がラインナップされている。

どれも魅力的に映ったが、僕が手に取ったのは「北陸新幹線弁当」だった。海の幸系の弁当は、例えば「鯛鮨」なら中身は鯛鮨だけというように、中身が単一であることが気になった。それなりにボリュームもあるため、途中で口飽きしてしまうことを恐れたのだ。その点、「北陸新幹線弁当」は様々な惣菜が詰め合わされている。

少し話は逸れるが、東海道新幹線に乗る際、僕はたいてい「東海道新幹線弁当」を選ぶ。各県の名物がバランスよく詰め込まれており、味付けも丁寧で、満足度は非常に高い。たまには、と他の選択肢も試してみることもあるのだが、結局は「東海道新幹線弁当」に戻ってきてしまうほどだ。一見やや割高のようでいて、いざ食べてみると値段分の価値は十分以上に感じられる。

今回の選択も、そんな自分の嗜好の延長線上にあったのだと思う。とはいえ、「鯛鮨」は敦賀の伝統の名物でもある(後から知った)から、土地のことをより濃く味わうという意味では、そちらにしておくべきだったかもしれない。

北陸新幹線弁当_塩荘ver_2408敦賀

2階の休憩所

駅弁を入手できたのは良いとして、それをどこで食べるかが問題だった。

「駅弁なのだから列車内で食べればいいじゃないか」と思われるかもしれない。僕もそう思う。だが、これから乗る小浜線は、記憶によればそこそこ混む路線で、座席に座れるかどうかは心もとない。全国どこのローカル線でもそうだが、利用人口は少なくても、その分だけ本数や運行車両も絞られるため、意外に車内は混んでいることが多いのだ。

敦賀駅の1階には休憩スペースが設けられていた。だがそこは既に超満員だ。とても落ち着いて食事ができる様子ではない。

構内をあちこち歩き回った末、偶然2階へと続く階段を見つけた。そちらには人の気配が少ない。かと言って「関係者以外立入禁止」のような掲示も見当たらない。入ってよいものだろうかと少し躊躇したが、思い切って進んでみると、その先には多目的室と休憩所があった。

2階は、1階の混雑が嘘のように静かだった。休憩室には椅子とテーブルがあり、利用客はポツポツといたが、空席も目立っていた。まだ存在があまり知られていないのかもしれない。僕は「これ助かった」という思いでその一角に腰を下ろし、さきほど買った弁当を広げた。

北陸新幹線弁当

「北陸新幹線弁当」は、北陸で駅弁を販売する5社がそれぞれ趣向を凝らして製造しており、異なる5つのバージョンが存在する。この日いただいたのは「塩荘」さんのものだった。

内容は、若狭梅と特産昆布の俵ごはん、伝統寿司酢のちらし寿司、北陸シウマイ、鯖の塩焼き、かしわの永平寺味噌炙り、九頭竜舞茸と打豆のかき揚げ、出汁巻き、大野の厚揚げ煮、名田庄漬け。

聞き覚えのある地名が並ぶ品書きを眺めるだけで、嬉しくなる。どれも美味しく、「東海道新幹線弁当」に劣らない満足感があった。甲殻類のアレルギーがあるため、十全に楽しみきれないのが悔やまれる。(軽度なので、こういうときは少量ならこらえて食べてしまう。)

僕は弁当を平らげた後、列車の時刻が近づくまで、のんびりと過ごした。

駅の混雑ぶりからして食事にはもう少し苦労するかと想定していたのだが、思いの外すんなりと、しかも静かな場所で食事にありつけた。そのおかげで時間的なゆとりができたのだ。

旅の合間に訪れた、ささやかで幸福な時間だった。

北陸新幹線弁当_塩荘ver_中身_2408敦賀